ハイドロのオイルはなぜATFを使用するのか?

Hydraulics

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ローライダー文化の象徴ともいえる「ハイドロリクス(Hydraulics)」システム。跳ねたり傾いたりといったダイナミックな動きは、すべてこの油圧装置によって実現されています。

そして、ハイドロの動作に不可欠なのが「油」ですが、実は一般的な作動油ではなく、ATF(Automatic Transmission Fluid/オートマチックトランスミッションフルード)を使うケースが非常に多いのです。

なぜハイドロでは一般的な作動油ではなくATFが使われるのか?

この記事ではその理由を解説します。


油圧装置に「油」が必要な理由

油圧装置は、液体に圧力をかけて機械の動力として利用するシステムです。この液体には必ずしも「油」である必要はないように思えますが、実際には以下の理由から「油でなければならない」のがわかります。

潤滑性が必要

金属同士が擦れ合う作動部において、潤滑性が低いと摩耗が激しくなり、装置の寿命が極端に短くなります。水にはほとんど潤滑性がありませんが、油には優れた潤滑性能があります。

粘度(粘り気)が安定している

液体の粘度は、力の伝達効率に直結します。油は温度変化に強く、一定の粘度を保てるように設計されています。

金属を腐食から守る

油には防錆性があり、金属表面を保護します。水を使うとすぐに内部が錆びてしまい、機器の故障につながります。

圧力に強い

油は非圧縮性が高く、力の伝達に優れています。水も非圧縮性ではありますが、他の点で劣ります。

ちなみに水では代用できないのか?

一見すると、水も非圧縮性があるため、油の代わりに使えそうに思えるかもしれません。しかし、現実的には水は油の代わりにはなりません。

  • 潤滑性がほとんどない → 摩耗や焼き付きが起きやすい
  • 金属を腐食させる → 内部が錆びて破損する
  • 粘度が非常に低い → 制御が不安定、漏れやすい
  • 添加剤が機能しづらい → 性能の拡張性が低い

なお、水系作動液(HFA・HFB・HFCなど)も存在しますが、これらは特殊添加剤を含んだ工業用の特殊用途液であり、汎用のハイドロシステムでの使用には向いていません。


ハイドロリクスにおける「ATF」の特別な役割

ハイドロには作動油が必要であることは理解いただけたと思いますが、作動油の中でもなぜ「ATF」が選ばれるのでしょうか?ATFは本来、オートマチックトランスミッション(AT)の中で使われる専用のオイルですが、その多機能性・高性能性が、ハイドロ用途にも理想的なのです。

ATFの主な特性

特性内容
潤滑性高速で動くクラッチやギアの潤滑に特化
耐熱性高温のトランスミッション内でも性能を維持
酸化防止性劣化しにくく、長期間安定した性能を保つ
清浄性スラッジや汚れを分散して内部を清浄に保つ
粘度安定性寒暖差に強く、常に安定した動作を保証
着色赤や紫などに着色されており、漏れ確認が容易

一般的な作動油とATFの比較

観点作動油(Hydraulic Oil)ATF(Automatic Transmission Fluid)
潤滑性標準的非常に高い(AT内部用に設計)
耐熱性用途により様々(ISO VG系)高温環境を前提に設計されている
粘度の安定性比較的高い高粘度指数で寒暖差に強い
価格やや安いやや高価
着色透明~黄色赤や紫で見やすく、漏れ点検が容易
一般入手性工業ルートが中心カー用品店や整備工場で入手しやすい

※一般的な作動油の中にも多種多様な種類がありますが、ここでは割愛しています。

ハイドロは一瞬で高圧・高速動作を求められるため、耐熱性と粘度安定性に優れるATFは非常に相性が良いと言えます。


ATFが使われている他の機器

実は、ATFは自動車のAT以外にも使用されています。以下のような装置にも用いられることがあります。

パワーステアリング装置

多くの車で、パワーステアリングの作動油としてATFが指定されています。トルク伝達と潤滑を同時に担う必要があるため、ATFの性能がマッチします。

農業機械・建設機械(UTTO)

農業トラクターや建設機械などで使用されるUTTO(Universal Tractor Transmission Oil)は、ATFに似た性質を持ち、ミッション・ブレーキ・油圧を一本でまかなう多機能オイルです。

高性能油圧機械

レースカーのアクティブサスペンションや産業用のカスタム油圧機器などでも、ATFが使われることがあります。これらは高温・高負荷環境に対応するため、ATFの優れた性能が選ばれます。


まとめ:ハイドロにATFを使うのは必然だった

ハイドロリクスにおいてATFが広く使用されるのは、高い潤滑性、優れた耐熱性、安定した粘度、視認性の高さといった多くの利点があるため、過酷な使用条件にさらされるハイドロの動作に最適なのです。

一般的な作動油でも最低限の動作は可能ですが、長期的な性能維持やトラブル防止、快適なチューニング環境を考慮すると、やはりATFの使用は非常に理にかなっているといえるでしょう。

安価だからと一般的な作動油を使うのは止めておいたほうがよさそうですね。

今後ハイドロを導入・整備する予定がある方は、ぜひATFのグレードや種類(Dexron系など)にも注目し、自分のシステムに最適なオイル選びを心がけてください。

高圧ハイトルクギヤポンプとATFの相性について

ハイドロに使われるギヤポンプ(とくにハイトルク・高圧タイプ)で推奨される作動油の条件と、Dexron IIIクラスのATFの性質は基本的に一致しています。

具体的には以下のような性能要件となります。

性能要件ギヤポンプに必要Dexron IIIクラスATFの特性
高い潤滑性
高温・高圧下での安定性
粘度の安定性(ISO VG 32~46)◎(常温で約32~40相当)
スラッジ・泡立ち防止
耐摩耗・防錆性

つまり、ハイドロポンプにDexron IIIクラスのATFを使うのは理にかなっており、「推奨される作動油と性能が一致している」と判断できます。


ハイドロ/高圧ギヤポンプにおすすめのATFを紹介

性能・信頼性・入手性・価格のバランスを考慮しています。

1. AISIN アイシン製 ATFワイドレンジ AFW+ 20L ATF6020

  • 特徴:
    • AISIN製のワイドレンジ対応ATFで、幅広い車種に適合します。
    • 高温・高圧環境でも安定した性能を発揮。
    • 低温時の流動性にも優れ、寒冷地での使用にも適しています。
    • 価格帯も手頃である。
  • 粘度等級: ISO VG 35 相当
  • 規格: DEXRON III 相当

2. ACDelco DEXRON VI Automatic Transmission Fluid ペール缶

  • 特徴:
    • GM純正指定のDEXRON VI規格品で、低温流動性と高温安定性に優れています。
    • 酸化安定性が高く、長期間の使用でも性能を維持。
    • 摩耗防止性能にも優れている。
    • DEXRON VIは少し軟らかめとなるが、ハイトルク、ハイパフォーマンス向け。
  • 粘度等級: ISO VG 32 相当
  • 規格: DEXRON VI

3. バルボリン マックスライフ マルチビークル ATF & CVTF 100%合成油 20L

  • 特徴:
    • 多車種対応のマルチビークル仕様で、長寿命設計です。
    • 100%合成油を使用し、極端な温度変化にも対応。
    • 摩擦特性が最適化されており、スムーズな作動を実現。
  • 粘度等級: ISO VG 34 相当
  • 規格: DEXRON III / MERCON

おまけ

ペール缶などからオイルを注ぐ際、ポンプタンクへ直接気合で注ぐことも出来ますが、ちゃんと便利なアイムありますので持っていない人のために紹介しておきます。

トラスコ中山(TRUSCO) オイルジョッキ ピノッキオ3L ノズル・本体蓋付 網付 PN-3

3Lと使い易く、本体に蓋が付いているので使用後の保管が容易です。他にも類似商品は多数ありますが、蓋があるとゴミや誇り対策となりますので便利ですね。

最後に注意事項

ショーカーやホッピングコンペ用途など、高圧仕様や連続作動による高負荷運用では、油温の急上昇や粘度低下によるシール劣化・オイル漏れ・圧力不安定などのリスクが高まります。

また、外気温(夏場の高温・冬場の低温)によってもATFの粘度は変化し、反応遅れや作動ムラの原因となる場合があります。

特に冬場は粘性上昇によりレスポンスが鈍くなりやすく、無理なスイッチ操作はポンプ破損などを引き起こす可能性があるため、十分な動作確認を行ってから本稼働を推奨します。

※紹介するATFは、推奨品でありハイドロの動作、性能保証をしているものではありません。

自分のハイドロにあったATF選びのご参考としてくださいね。

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