ローライダー文化の象徴ともいえる「ハイドロリクス(Hydraulics)」システム。跳ねたり傾いたりといったダイナミックな動きは、すべてこの油圧装置によって実現されています。
そして、ハイドロの動作に不可欠なのが「油」ですが、一般的な作動油の他に、ATFを使うケースがあります。
ATF:(Automatic Transmission Fluid/オートマチックトランスミッションフルード)
ストリート仕様でATFが有効な理由を解説していきます。
ご紹介するのは次の3点となります。
油圧装置に「油」が必要な理由

油圧装置は、液体に圧力をかけて機械の動力として利用するシステムです。この液体には必ずしも「油」である必要はないように思えますが、実際には以下の理由から「油でなければならない」のがわかります。
- 潤滑性が必要・・・金属同士が擦れ合う作動部には必須。
- 粘度(粘り気)が安定している・・・温度変化に強く伝達効率に直結。
- 金属を腐食から守る・・・防錆性が必要。
- 圧力に強い・・・非圧縮性が高く、力の伝達に優れている。
ハイドロリクスにおける「ATF」の特別な役割

ハイドロを動作させる為に、作動油の中でもなぜ「ATF」が選ばれるのでしょうか?
ATFは本来、オートマチックトランスミッション(AT)の中で使われる専用のオイルですが、その多機能性・高性能性が、ハイドロ用途にも一致しているのです。
ATFの主な特性
| 特性 | 内容 |
|---|---|
| 潤滑性 | 高速で動くクラッチやギアの潤滑に特化 |
| 耐熱性 | 高温のトランスミッション内でも性能を維持 |
| 酸化防止性 | 劣化しにくく、長期間安定した性能を保つ |
| 清浄性 | スラッジや汚れを分散して内部を清浄に保つ |
| 粘度安定性 | 寒暖差に強く、常に安定した動作を保証 |
| 着色 | 赤や紫などに着色されており、漏れ確認が容易 |
一般的な作動油とATFの比較
| 観点 | 作動油(Hydraulic Oil) | ATF(Automatic Transmission Fluid) |
|---|---|---|
| 潤滑性 | 標準的 | 非常に高い(AT内部用に設計) |
| 耐熱性 | 用途により様々(ISO VG系) | 高温環境を前提に設計されている |
| 粘度の安定性 | 比較的高い | 高粘度指数で寒暖差に強い |
| 価格 | やや安い | やや高価 |
| 着色 | 透明~黄色 | 赤や紫で見やすく、漏れ点検が容易 |
| 一般入手性 | 工業ルートが中心 | カー用品店や整備工場で入手しやすい |
※一般的な作動油の中にも多種多様な種類がありますが、ここでは割愛しています。
ハイドロは一瞬で高圧・高速動作を求められるため、耐熱性と粘度安定性に優れるATFは非常に相性が良いと言えます。
ATFが使われている他の機器
実は、ATFは自動車のAT以外にも使用されています。以下のような装置にも用いられることがあります。
- パワーステアリング装置・・・俗に言うパワステ
- トランスミッション・・・古いスポーツカーなど
- 産業油圧機械・・・アクティブサスペンションや産業用のカスタム油圧機器などで一部
まとめ:ハイドロにATFを使うのは必然だった

ハイドロリクスにおいてATFが広く使用されるのは、高い潤滑性、優れた耐熱性、安定した粘度、視認性の高さといった多くの利点があるため、過酷な使用条件にさらされるハイドロの動作にあっているといえますね。
一般的な作動油でも動作は可能ですが、長期的な性能維持やトラブル防止、快適なチューニング環境を考慮すると、ATFの使用はに理にかなっているといえるでしょう。
今後ハイドロを導入・整備する予定がある方は、ぜひATFのグレードや種類(Dexron系など)にも注目し、自分のシステムに最適なオイル選びを心がけてください。
高圧ハイトルクギヤポンプとATFの相性について
ハイドロに使われるギヤポンプ(とくにハイトルク・高圧タイプ)で推奨される作動油の条件と、Dexron IIIクラスのATFの性質は基本的に一致しています。
Dexron(デキシロン)」とは、アメリカの自動車メーカーであるゼネラルモーターズ(GM)が定めたオートマチックトランスミッションフルード(ATF)の規格、商標となります。
具体的には以下のような性能要件となります。
| 性能要件 | ギヤポンプに必要 | Dexron IIIクラスATFの特性 |
|---|---|---|
| 高い潤滑性 | ◎ | ◎ |
| 高温・高圧下での安定性 | ◎ | ◎ |
| 粘度の安定性(ISO VG 32~46) | ◎ | ◎(常温で約32~40相当) |
| スラッジ・泡立ち防止 | ○ | ◎ |
| 耐摩耗・防錆性 | ◎ | ◎ |
つまり、ハイドロポンプにDexron IIIクラスのATFを使うのは理にかなっており、「推奨される作動油と性能が一致している」と判断できます。
ハイドロ/高圧ギヤポンプにおすすめのATFを紹介
性能・信頼性・入手性・価格のバランスを考慮しています。
1. AISIN アイシン製 ATFワイドレンジ AFW+ 20L ATF6020
- 特徴:
- AISIN製のワイドレンジ対応ATFで、幅広い車種に適合します。
- 高温・高圧環境でも安定した性能を発揮。
- 低温時の流動性にも優れ、寒冷地での使用にも適しています。
- 価格帯も手頃である。
- 粘度等級: ISO VG 35 相当
- 規格: DEXRON III 相当
2. ACDelco DEXRON VI Automatic Transmission Fluid ペール缶
- 特徴:
- GM純正指定のDEXRON VI規格品で、低温流動性と高温安定性に優れています。
- 酸化安定性が高く、長期間の使用でも性能を維持。
- 摩耗防止性能にも優れている。
- DEXRON VIは少し軟らかめとなるが、ハイトルク、ハイパフォーマンス向け。
- 粘度等級: ISO VG 32 相当
- 規格: DEXRON VI
3. バルボリン マックスライフ マルチビークル ATF & CVTF 100%合成油 20L
- 特徴:
- 多車種対応のマルチビークル仕様で、長寿命設計です。
- 100%合成油を使用し、極端な温度変化にも対応。
- 摩擦特性が最適化されており、スムーズな作動を実現。
- 粘度等級: ISO VG 34 相当
- 規格: DEXRON III / MERCON
おまけ
ペール缶などからオイルを注ぐ際、ポンプタンクへ直接気合で注ぐことも出来ますが、ちゃんと便利なアイムありますので持っていない人のために紹介しておきます。
トラスコ中山(TRUSCO) オイルジョッキ ピノッキオ3L ノズル・本体蓋付 網付 PN-3
3Lと使い易く、本体に蓋が付いているので使用後の保管が容易です。他にも類似商品は多数ありますが、蓋があるとゴミや誇り対策となりますので便利ですね。
最後に注意事項
ショーカーやホッピングコンペ用途など、高圧仕様や連続作動による高負荷運用では、油温の急上昇や粘度低下によるシール劣化・オイル漏れ・圧力不安定などのリスクが高まります。
また、外気温(夏場の高温・冬場の低温)によってもATFの粘度は変化し、反応遅れや作動ムラの原因となる場合があります。
特に冬場は粘性上昇によりレスポンスが鈍くなりやすく、無理なスイッチ操作はポンプ破損などを引き起こす可能性があるため、十分な動作確認を行ってから本稼働を推奨します。
※紹介するATFは、推奨品でありハイドロの動作、性能保証をしているものではありません。
自分のハイドロにあったATF選びのご参考としてくださいね。



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